知識がない人ほど能力があると過信するダニング=クルーガー効果とは?

認知バイアス

ダニング=クルーガー効果とは、人生を井の中の蛙で終わらないために知っておくべき認知の歪みのことです。

世の中では、この認知の歪みによって「完全に理解した」と失敗する人がたくさんいます。自分や周りや職場の人にダニング=クルーガー効果が起きていないか分かれば、人生の失敗を減らます。

ダニング=クルーガー効果とは?

ダニング=クルーガー効果とは、能力が低い人ほど、自分には能力があると過大評価してしまう現象のことです。逆に、能力が高い人ほど、自分には能力がないと過小評価してしまうという認知の歪みも含みます。

ダニング=クルーガー効果には2つの性質があります。
1,能力が低い人は、自分を過大評価する
2,能力が高い人は、自分を過小評価する

つまり、人間は自分の能力を正しく評価出来ないってことです。

※人は他人の能力も正しく評価出来ないので、合わせて注意が必要です。

クルーガーとダニングの実験

この認知バイアスは、ジャスティン・クルーガー研究員とデビッド・ダニング博士によって1999年に発見されました(1)。

コーネル大学の学部生65人を対象に、ある3つの能力について自己評価と実際の点数にどのくらいの差があるかテストしました。その結果が下のグラフです。

ダニングクルーガー効果 グラフ

ダニング=クルーガー効果の実験結果グラフ

<実験の結果>
・テストの成績が悪かった下位25%の人は、実際の点数が12点なのに自分の点数は58点だと推定していました。つまり、能力が無い場合でも自分は平均より優れていると自分の能力を過大評価していたわけです。

・逆にテストの成績が良かった上位25%の人は、実際の点数が90点以上なのに自分の点数は80点程度だと推定していました。つまり、自分の能力はそこまで高く無いと過小評価していたわけです。

<結論>
1,能力の認識は実際の能力はわずかに相関していたが、人は仲間と比較して自分の能力を過大評価・過小評価する傾向がある。

2,重要な事は“成績が悪い人がその事実に全く気付いていない”ということ。

この結果から、能力が低い人は自分を平均以上だと思っていることが分かるわけです。

この現象は、学生の時に一度は経験する無勉強で臨んだテストが上手く解けたと思っても実際は全然ダメだったってアレですね。テスト後は平均点くらいとれたなって自信満々だけど、テストが返ってきたら絶望するやつです。

何度も身に覚えがあるので良く分かります。

ダニング=クルーガー効果が起こる例

では、このダニング=クルーガー効果は、日常のどんな場面で起こるんでしょうか?

実は、小さな事から大きな事まで、いろいろな場所で起きます。

特に、人とのコミュニケーションや運動能力、騙されやすさなど、自分と他人の認識のずれがある場所でよく起こります。特定のジャンルに限らず、スポーツ、学問、仕事や論理的な思考など、いろいろな場面で起こります。

<例>
・SNS上でプロを見下す素人
・自分の運転が上手いと思う運転者
・自分は騙されないと思う詐欺被害者
・能力不足だけど天狗になる一発屋芸人
・職場で能力アピールをする新人
・実力を過信して起業で失敗する若者
・自分のかっこよさ、かわいさを中の上と言う人が多いなど

日常のありとあらゆるところで自分の認識と実際の能力のギャップはあります。

ダニングクルーガー効果の曲線

ダニングクルーガー効果の曲線(commons.wikimedia.orgより)

このギャップは、初心者ほど自分の自信と実際の実力が伴わないために起こり、その結果失敗することも多いので、自分がダニング=クルーガー効果に陥ってないか注意深く観察することが重要です。

ダニング=クルーガー効果の逆の効果

また、ダニングクルーガー効果の反対語としてインポスター症候群というものがあります。

<インポスター症候群とは?>
自分の力で何か達成し周りから高く評価されても、自分は運が良かった・周りに助けて貰ったおかげだ。と思って自分を過小評価し、能力を下方向に錯覚することです。

自分の能力を実際の実力より下に見てしまう現象のことです。

インポスター症候群は特に女性に多く、社会で活躍する女性が自分が選ばれたのは女性だったから。実力では無い。と自分を卑下し、本来の力を発揮できないようなこともあります。

対策

では、このようなダニング=クルーガー効果やインポスター症候群を回避するにはどうしたら良いんでしょう?対策は、客観的に自分を見ることです。

<対策>
1,原因を知る
2,客観的な指標を使う
3,他者や多くの人と交流を持つ
4,建設的なフィードバックをもらう

1,原因を知る

ダニング=クルーガー効果やインポスター症候群の原因は、自分を客観的に見れていないことです。

言い換えると、メタ認知能力が不足しているって事です。

メタ認知とは「認知を認知する」「自分自身を客観的に見る」ことです。つまり、他人を見るように自分の事も客観的に見る能力のことをメタ認知と言います。

このメタ認知が不足すると、周りが見れなくなり、自分の能力を客観視できず、自分を過大評価・過小評価してしまうわけです。

なので、このメタ認知能力を鍛えるため2〜4の対策が必要になってきます。

2,客観的な指標を使う

何かを判断するときは、データなどの客観的な数値を元に判断しましょう。

自分の行動などを数値化することで客観的に比較できます。仕事のグループや世間一般と定量的に自分を比較できれば、ダニングクルーガー効果が起きづらくなります。

これは平均体重やBMIと同じで、数字で自分を客観的に見るって事です。

客観的な指標が分からない。という方は、本サイトはおすすめです。基本的に論文や実験などの客観的事実に基づいて話しをしますので、自分がどこに当てはまるかどうかメタ認知のトレーニングにもなります。

3,他者や多くの人と交流を持つ

他の人やいろいろな人と意見を交わしてみてください。

「他の人はこう考えるのかぁ」と思うだけでも効果的なので、人との交流を通して、自分を客観的に見つめるのは非常に効果的です。

自分以外の意見をしることで、より客観的になれます。

4,建設的なフィードバックをもらう

最後に、周りの信頼出来る人にフィードバックを貰いましょう。

ダニングクルーガー効果などの認知の歪みは、自分が判断することで大きな歪みとなります。

他人が他人の事を上手く評価できるわけでは無いですが、信頼出来る人なら大きな歪みは起きづらいので、他の方法と合わせて使うと効果的です。

まとめ

今回は、ダニング=クルーガー効果についてまとめました。

ダニング=クルーガー効果には2つの性質があります。
1,能力が低い人は、自分を過大評価する
2,能力が高い人は、自分を過小評価する

また逆のインポスター症候群では。
1,自分を過小評価し、能力を下方向に錯覚する

このような認知の歪みが発生します。
対策としては、自分を却下的に見れるようになるメタ認知が効果的なので、ぜひ認知の歪みで失敗しないためにもメタ認知を鍛えてみてください。

論文の信憑性

最後に今回紹介した論文の信憑性の評価です。

信憑性:

あくまで60人程度を対象とした研究なので確実にこの効果があるとは断言できません。マズローの欲求のように後に覆る可能性もあります。

ただこのバイアスは世の中にありがちな話なので、ダニングクルーガー効果には気をつけておいた方がよさそうです。

視野狭窄と合わせて自分の能力の勘違いが人生の大きな失敗に繋がる事もありますので、効果のことを頭の隅に置いておくのがよさげです。

 

 

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