ドア・イン・ザ・フェイスは本当に効果があるか?最新研究から分かった効力と利用方法

人の本質

譲歩的要求法(ドア・イン・ザ・フェイス)、別名DITF技法という、有名な交渉のテクニックがありますよね。

このテクニックは、最初に「1万円貸して!」と大きなお願いをして断られた後に、「じゃあジュースおごって!」と小さなお願いをすると、いきなりジュースをお願いされるより相手が要求を受け入れてくれる確率が高まる心理テクニックです。

この由来は、人を動かすテクニックが詰まった名著「影響力の武器」の2章にも出てくるテクニックで、非常に効果的があると言われており、営業トークや交渉の中でよく使われています。

ただ、このオリジナルの研究は1975年にロバート・チャルディーニ(1)が行ったもので、約45年も経過しているのが難点です。実験対象も、当時のアメリカの大学生202人だけだったので、実際に本当に効果があるのか研究者からは疑われています。実際、有名な研究も再検証されたことで結論がひっくり返ることがあります()。

そこで、2020年になって古典的手法のドア・イン・ザ・フェイスは本当に効果があるのかを検証した研究が出てきました()。

研究の内容

この研究は、ドイツのケルン大学が行っており、約半世紀前の1975年の古典的な研究を再現して行った物となってます。ただし、オリジナルの研究では対象人数がアメリカの大学生72人と少なく統計的に有意ではなかった(誤差が大きい)ので、サンプル数を増やし統計上有意な391人の参加者で集めて実験しております。

実験内容はオリジナルと同じく、ケルン大学のキャンパス内で初対面の人に大きなお願いをした後に小さなお願いをします。

<お願いの内容>
1,最低2年間、週2回の少年達の世話をしてほしい。
2,少年達が2時間かけて動物園に行く付き添いをしてほしい。

また、ドア・イン・ザ・フェイスの効果を計るため、別のグループには2の小さな条件のみでお願いをしました。

つまり、いまの世の中でもドア・イン・ザ・フェイスは使えるか、しっかりとした条件下で検証し直したわけです。

実験の結果

そして、結果がどうなったかというと、ドア・イン・ザ・フェイスを使った方が、お願いを聞いて貰える確率が高くなりました。

<結果>
小さいお願いだけをした承諾率は33.6%
大→小の順でお願いをした承諾率は51.3%

このように、小さいお願いするだけより、大きなお願いを断られた後に小さなお願いをしたほうが効果があったわけです。

大→小の順でお願いすると、単純計算で約1.5倍もお願いを聞いて貰えるようになるのはスゴいです。

ちなみに、1975年のオリジナル研究と数値を比較しても似たような数値になっています。なので、ドア・イン・ザ・フェイスは昔もいまも使えるテクニックってわけです。

これから何かお願いするときは、大きなお願いをしてから小さなお願いをした方が、お願いを聞いて貰いやすいですよ。

お願いは大きいもの→小さいものがいい

また別の実験で面白い事が分かっています。なんと、小さなお願いを断れた後に別の小さなお願いをしても承諾率が上がらなかったんです。

<お願いの内容>
1,少年達が2時間かけて博物館に行く付き添いをしてほしい。
2,少年達が2時間かけて動物園に行く付き添いをしてほしい。

つまり今回の実験では、大→小のお願いには効果があるけど、小→小のお願いにはドア・イン・ザ・フェイス効果が働かなかったわけです。

お願いの大きさはまだ研究中なので、とりあえず大きめのお願いをした後に小さなお願いをした方がお願いは聞いて貰えそうです。

やっぱり、相手に譲歩してもらったという感情が生まれることが大切そうです。

ドアインザフェイスの応用例

ドア・イン・ザ・フェイスは、いろいろな場面で使えますし、使われています。

生活の中でも使われていますので、返報性から身を守るためにも、自衛のためにも応用例を知っとくと便利です。

<仕事で使う場合>
明日までにお願いできますか?→なら、三日後ならどうですか?

<値引きに使う場合>
テレビを2万円安くして?→なら、1万円割引して!

<恋愛で使う場合>
今度、旅行に行かない?→なら、今度映画に行こうよ。

<営業で使う場合>
Aプランなら全部の機能がついて100万円です→Bプランなら必要十分な機能がそろって70万円です。

ポイントは、最初のお願いを大きくして相手に不快感を与えないことです。お願いしても不快じゃないラインで、本当にお願いしたいことよりも大きなお願いをするのが効果的です。

また、相手にこちらの提案を拒否されたら、相手に気まずさがあるうちに譲歩した提案をすることも大切です。そうすれば、相手はこちらが譲歩したのだから次は自分だと思い提案を譲歩してくれます。

お願いは、小さくなくても譲歩した相手が感じればOKです。逆に、自分に使われたときは、早めに気づいて譲歩しないようにするのが得策です。

最後に

ちなみに、このドア・イン・ザ・フェイス・テクニックは、4つ以上のメタアナリシス()が行われていまして、信憑性は非常に高く、実際ある程度効果があるテクニックとなってます。

信憑性:

なので、もしあなたが相手からドア・イン・ザ・フェイスを仕掛けられたときは、仕掛けられたと自覚して、譲歩しないように交渉をすすめてみてください。

また、このテクニックを自分で使う際には、法律的・倫理的な面に配慮しながら利用してください。悪用すると、後々ろくなことになりませんので用心するに越したことはありません。

ということで、このテクニックは守りと攻めのどちらにも使える非常に強力なものなので、ビジネスや私生活で安心してお使い頂ければと思います。

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